《金魚》2024年/アルミマウント/S4(333×333mm)
¥71,000
【金魚は、なぜ泳いでいるのではなく、“飼われている”のか。】
透明な鉢のなかには、美しさと引き換えに閉じ込められた何かがある。
金魚の由来を辿ると、
それは中国で飼育されていたフナ(主にヒブナ)に現れた赤や金色の突然変異。
“美しい”とされたその姿が人の手で選ばれ、繁殖されたことに始まるらしい。
美しさを理由に選ばれ、
美しさを理由に閉じ込められる。
その在り方に、私は自分自身の姿を見た。
このデジタルカメレオンシリーズの作品《金魚》は、
もともと抑圧された何かが溢れ出すようなエネルギーを描きたいという衝動から始まった。
私はこの絵を描く前に金魚を描くと決めていたわけではない。
何か飛び出すエネルギーを描いてみたいと思いペンを取った。
そうして、抽象的な線と形が重なり合う中で、
ある瞬間、私はその模様の中に「金魚」の姿を見出した。
そのとき、理解した。
抑え込まれたものが溢れる、その瞬間こそが金魚の姿であると。
金魚は、評価され、愛でられる存在として水槽に閉じ込められる。
その評価こそが、自由を奪う檻となることもある。
私は常に、自分や世界の本質を越え、可能性の先を見ようとしてきた。
その願いは、あの水槽から飛び出そうとする金魚の跳ねる力と重なる。
例えるなら、
幼少期、「泣かないでえらいね」と言われた言葉を思い出す。
その言葉は、私にとって涙を見せられない状況の壁、
まるで水槽のガラスのようだった。
外から見えるものと、内側に渦巻く苦しさは異なる。
その隔たりを、私は金魚というかたちで描こうとした。
私は今も、“本来の自分”とは何かを考えながら生きている。
そこに近づこうとするたびに、私は思う。
この大変さもまた、生を全うしようとする喜びなのだと。
世間の常識、与えられた評価、固定された思考。
それらは水槽のように、私たちの動きを美しく囲い込む。
だが、本当の美しさはそこを破り、跳ね、
あふれていく生命の、本質的な力の中にこそ宿る。
この作品では、金魚鉢を破ろうとする一匹の金魚を描いている。
私の中にも、あなたの中にも、
金魚のような“崇高なる美”がきっとある。
それは理想に向かう強い意志の塊。
本来の美とは、そうしたものが世界の境界を越え、
自由に泳ぎ出す瞬間に燃え上がる情熱なのかもしれない。
背景には、カレイドスコープ《2024.07.28》を使用した。
花開くような空の模様の中に、
閉じられた世界から飛び出す意志を重ねている。
さて、
──では、あなたにとって“金魚鉢”とは何だろうか。
それは、自らが築いた壁だろうか。
あるいは、知らぬうちに与えられた檻だろうか...。
渡邉帆南美《金魚》2024年/アルミマウント/S4(333×333mm)
《デジタルカメレオンシリーズ》
・一作品限定。
・サイン、作品証明書あり
・KYOTO STATION GALLERY【GRAND OPENING セレクション】入選作品
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